4度程ルアーを外そうと宙を舞った。
”どうだ!”と言わんばかりに見せつけられた。
それから小一時間程その場を離れる事が出来なかった。
頼む、頼むからルアーだけでも返してくれ!
無事に口から外れてプカ〜っと浮いてこないか待ったが
諦めて帰路についた。
それから2週間後の事だった。
同じ川にボートを浮かべた。
ほぼ同じコースを釣り下った。
今回はボート前に乗せて貰っての釣り。
いつもより視野が広く感じた。
今回はエンジンを装着しているのもあって2週間前よりも
より下流まで足を延ばした。
前にもまして水位が低くバスの調子が良くなかった。
「ちょっと上流に上がって様子見てみる?」って事で
エンジンをふかし全速力で水を切って上がった。
橋を3本越え4本目の橋を越える。
4本目の橋は水量が多く少し流れが速かった。
僕はボート前方で両手にガンネルをギュット持ち岸際をボーっと見ていた。
その時だ、4本目橋の下左岸の一番流れが当たる垂れた蔦に一瞬シルバーの何かが目に入った。
だがエンジンの力は凄く水流などもろともとせずに過ぎ去った。
僕は「多分違うだろう。まさかあんな所に引っかかるはずは無いよな。。」と思いつつも
「いや、シルバー色の中に一瞬だけブルーが見えたよな。あれは僕のルアーじゃないのか。」
そんな事を考えていると300m程過ぎてしまっていた。
「さっきルアーあったかもしれません。。ちょっと戻ってみてもらっていいですか?」
「え!あったん?」
「いや、確信は無いんですけどなんとなく。。」
「分かった!それは確認しに行こう!!どこらへんだった?」
「あの流れの一番強い所に垂れ下がっている蔦なんですけど。」
「よし分かった!!」
「流れ早いな〜エンジン切らずに近寄って一回確認しようか。」
「お願いします。」
エンジンがグウォ〜っと水を掻き回す音が響いた。
「どう!?」
「もうちょっと進んでもらっ」間違いない!これはルアーだ!!
「ルアーです!プロップと目の周りのブルーが見えました!」
「よっし!もう一度下から近づくな!」
「お願いします!」
「これでどう!?」
「もう少し近づいて下さい。」
「掴みました!ちょっとこのポジションでキープお願いします。」
「取れた〜〜!!!」
この後二人は”やった〜”を何度言ったことか。
すぐさまルアーを確認すると、まず目に飛び込んできたのはルアーに刻まれた歯形だった。
何度も、何度もヘッドシェイクをし外そうと試みた跡がはっきりと残っていた。
自分の物かどうかを確認する為に探したのは昔に岩場に当てた後のリタッチ箇所。
間違いなく見覚えのあるリタッチを確認した。
僕の物だ。
バスの口からルアーが外れてくれていた事が確認できた事も嬉しかった事の一つだった。
残された歯形は深く歯の間隔広く間違いなくランカーだった事を想像させた。
今でもこのルアーを見ると色々な感情と共に胸が熱くなる。
今度は下顎をガッチリと掴んでやる。
2021年まってろよ ” Big Billy ’B’ ”
あのランカーをBig Billy ’B’ と名付けた。